個人事業の会計ソフトから法人用に移すとき
この記事の要点
- 個人用の会計ソフトを法人でそのまま使うことはできません。法人には法人用のプラン・製品があります。
- 帳簿の数字は引き継ぎません。個人事業と法人は別人格なので、法人は「資本金だけがある状態」から始まります。
- 移行のタイミングは法人の設立日。個人側は廃業日までの分を確定申告で締めます。
まず押さえること:数字は引き継がない
法人成りでいちばん誤解が多いところです。個人事業の帳簿の残高を法人の帳簿にそのまま持ち込むことはできません。
| 主体 | 会計上の扱い | 資産の扱い |
|---|---|---|
| 個人事業 | 廃業日までを個人の所得として確定申告 | 事業用資産は個人のもの |
| 法人 | 設立日から新しい帳簿を開始 | 資本金の払込みが最初の仕訳 |
個人が使っていたパソコンや車を法人で使うなら、売買か賃貸借の形で法人に移す必要があります。無償で移すと別の問題が生じます。→ 個人事業から法人成りするときの手続き、競業避止と利益相反取引
ソフトの移行でやること
- 個人側:廃業日までの取引を入力し切り、確定申告まで終わらせる
- 個人側:申告が終わったらデータを解約前に書き出す(保存義務があるため)
- 法人側:法人用のプラン・製品を新規に契約する
- 法人側:設立日を期首として事業年度を設定する
- 法人側:資本金の払込みを最初に記帳する
- 法人側:口座・カードの連携を法人名義のものに張り替える
2を飛ばすと後で困ります。個人事業の帳簿・領収書にも保存義務があり、廃業しても消えません。解約するとデータを取り出せなくなるサービスもあるので、解約前に書き出してください。→ 領収書とレシートの保存、電子帳簿保存法で最低限やること
法人用を選ぶときに見るところ
| 確認項目 | 見るポイント | 関連 |
|---|---|---|
| 法人税の申告に対応しているか | 申告書まで作れるのか、決算書までなのか | 税理士に頼むなら決算書までで足りることも |
| 消費税の対応 | 課税事業者になったときに簡易課税・2割特例に対応するか | → 簡易課税の選び方 |
| 電子帳簿保存法への対応 | 電子取引データの保存要件を満たせるか | → 電子帳簿保存法 |
| インボイスの対応 | 適格請求書の記載事項を満たす請求書を出せるか | → 適格請求書に何を書くか |
| 給与計算 | 人を雇う予定があるか | → 給与計算の手順 |
| 税理士との共有 | 顧問税理士が使えるか、データを渡せるか | 契約前に税理士側に確認する |
料金プランと機能は各社が随時変更しています。当サイトでは特定の製品の価格や機能を断定せず、比較する観点だけを示しています。実際の内容は各社の公式サイトでご確認ください。
先に税理士を決めるかどうか
税理士に頼むなら、ソフトを契約する前に相談したほうが早いです。税理士側が対応しているソフトが決まっていることが多く、後から乗り換えると手戻りになります。→ 税理士の探し方と費用の見当、記帳代行と税理士の違い
初期設定でつまずきやすいところ
- 事業年度の設定:設立日が期首。決算月は定款で決めた月 → 決算期はいつにするか
- 消費税の設定:設立1期目は原則免税。誤って課税で設定すると数字が合わない → 設立から2年の免税が崩れる条件
- 役員報酬の科目:給料手当ではなく役員報酬で計上する → 役員報酬の決め方
- 個人の口座が混ざる:法人口座を先に作り、そこだけ連携する → 法人口座の開設、口座を複数持つべきか
- 役員借入金:設立直後に社長が立て替えた分は借入金として記帳する → 役員貸付金と役員借入金
出典・根拠
- 帳簿・書類の保存義務:法人税法および関連省令(個別記事の出典を参照)
- 電子取引データの保存:電子帳簿保存法で最低限やることに出典を記載
会計ソフトの料金・機能は各社が随時変更するため、本記事では特定製品の内容を記載していません。
最終確認日:2026年9月9日。制度は改正されます。実際の手続きの前に、上記の一次資料および所轄の窓口で最新の内容をご確認ください。当サイトは税理士・社会保険労務士・司法書士・弁護士による相談業務を行うものではありません。