社長に万一があったときの備え
ひとり法人の最大の構造的リスクは、代表者が1人しかいないことです。会社は残るのに、動かせる人がいない状態になります。考えたくない話ですが、備えは書類数枚で足ります。
何が止まるか
| 止まるもの | 理由 |
|---|---|
| 法人口座 | 代表者の死亡が金融機関に伝わると、取引が制限されることがある |
| 契約の締結・解約 | 代表権を持つ人がいない |
| 従業員への給与支払 | 振込を実行できる人がいない |
| 税務申告 | 申告義務は残る |
| 取引先への納品 | — |
会社は自動的には消えません。均等割も発生し続けます。→ 赤字でも払う均等割、休眠会社にする
条文上の受け皿
同条第2項:前項に規定する場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時代表取締役の職務を行うべき者を選任することができる。
1項は「任期の満了又は辞任により退任した」場合の規定なので、死亡には当てはまりません。残るのは2項の裁判所への申立てです。取締役についても346条2項に同様の規定があります。
株式は相続される
社長が全株を持っている場合、その株式は相続財産です。相続人が確定するまで、株主総会で新しい取締役を選ぶことも簡単ではありません。相続人が複数いれば、遺産分割が終わるまで準共有の状態になります。
誰が何株持っていたかを示す書類が株主名簿です。作っていないと、ここで揉めます。→ 株主名簿は作らないといけないのか、株式の譲渡制限と株主設計
事前にできること
1. 取締役をもう1人置く(配偶者など):代表権がなくても、取締役が残っていれば選定の道が広がる
2. 株主名簿を作って最新にしておく
3. 会社の重要情報を1か所にまとめる:口座、契約、ID、税理士の連絡先
4. 定款の写しと登記事項証明書を家族が取れる場所に置く
5. 株式の承継について遺言を検討する
1は費用がかかります(役員変更登記、任期到来ごとの重任登記)。報酬を出さない取締役でも社会保険は原則不要ですが、責任は負うことになるため、本人の理解が前提です。→ 役員の任期と重任登記、家族を役員や従業員にする場合、取締役の義務と責任
3の「まとめる」が一番効く
費用ゼロで、効果が大きい対策です。次を1枚にまとめて、家族が見られる場所に置きます。
- 法人口座(銀行名・支店・口座番号)→ 法人口座の開設
- 継続契約(バーチャルオフィス、ドメイン、SaaS、リース)→ 契約更新と自動更新の管理
- 税理士・司法書士・社労士の連絡先 → 税理士に頼むか自分でやるか
- 会計データの場所とログイン方法 → 法人向け会計ソフトの選び方
- 重要書類の保管場所 → 会社の重要書類の保管
経営者保証がある場合
個人保証が付いている借入は、相続の対象になります。相続人が保証債務を引き継ぐことになるため、保証の有無は家族が知っておくべき情報です。→ 経営者保証を外せるか
畳む選択肢も含めて
事業を続ける人がいないなら、清算する判断になります。手続きは→ 解散と清算の手続き、判断材料は→ 続けるか畳むかの判断
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6問で次にやることを出す出典:会社法346条、351条(e-Gov法令検索で条文を確認)。相続手続きの具体的な進め方は弁護士・司法書士にご確認ください/最終確認日:2026年9月9日