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取締役の義務と責任

「株主有限責任だから、会社が潰れても個人には及ばない」は半分だけ正しい話です。出資者としては有限責任ですが、取締役としては別の責任を負っています。

会社との関係は「委任」

会社法第330条:株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

委任なので民法644条の善管注意義務(善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務)が適用されます。「雇われているから言われたとおりにやればよい」ではなく、自分の判断について責任を負う立場です。

会社法第355条(忠実義務):取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。

会社に対する責任

会社法第423条第1項:取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

ひとり法人では「自分が自分に払う」形になるため実感が薄いのですが、株主が複数いる場合や、会社が破産して管財人が追及する場合に現実の問題になります。

第三者に対する責任

会社法第429条第1項:役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
同条第2項:次の行為をしたときも同様とする(注意を怠らなかったことを証明したときを除く)。
取締役については、イ 募集の際の重要事項の虚偽の通知・資料の虚偽記載、ロ 計算書類及び事業報告等に記載すべき重要事項についての虚偽の記載ハ 虚偽の登記ニ 虚偽の公告

これが「会社と個人は別」の例外です。取引先が回収できなかった損害について、代表者個人が直接請求される根拠になります。

2項ハの「虚偽の登記」は他人事ではありません。実態のない本店を登記する、役員の変更を放置するといった行為が該当しうる領域です。→ 本店をどこにするか役員の任期と重任登記

ひとり法人で実際に問題になる場面

場面関係する条文
会社の金を私的に使う355条(忠実義務)、423条 → 役員貸付金と役員借入金
会社と自分の間で取引する356条1項2号(利益相反)→ 競業避止と利益相反取引
回収できないと分かっていて発注する429条1項(悪意・重過失)
決算書を粉飾する429条2項ロ
登記を放置する429条2項ハ、過料 → みなし解散に注意
源泉所得税を預かったまま納めない会社債務だが、実務上は代表者の管理責任が問われる → 延滞税と加算税

やっておくと守りになること

1. 会社の金と個人の金を混ぜない(口座を分ける)→ 口座を複数持つべきか
2. 判断を記録に残す(議事録・決定書)→ 議事録の作り方と保存期間
3. 登記事項を期限内に更新する → 登記が必要になる変更の一覧
4. 決算書を実態どおりに作る → 決算書の読み方
5. 支払えない見込みが立ったら早く動く → 続けるか畳むかの判断

1と2は、融資の場面でも直接効きます。法人と個人の資産の分離は経営者保証を外す要件の一つです。→ 経営者保証を外せるか

合同会社の場合

合同会社の業務執行社員も、会社法593条により善管注意義務を負い、責任の構造は似ています。「合同会社だから責任が軽い」ということはありません。合同会社の運営ルール

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6問で次にやることを出す

出典:会社法330条、355条、423条、429条(e-Gov法令検索で条文を確認)/最終確認日:2026年9月9日